STORY

SUITEROOM探訪シリーズ コラム07

INAXの「スイートルーム」といえば、今までのバスタイムでは得られなかった贅沢なくつろぎのひとときを提案するバスルーム。
その究極の形ともいえる「リゾートスタイル」という新しいシリーズがこの4月に誕生したと聞いて、INAX の商品開発室(愛知県常滑市)を訪ねてみることにしました。(2006年4月)

さらに広く、さらに贅沢なバスタイムを愉しむために

さっそく、SUITEROOM開発課にて「スイートルーム」の「リゾートスタイル」(2027タイプ)の開発意図についてお聞きしてみると、そのポイントは2つ。「バス&パウダールームを拡大して1.8坪+1.5坪まで対応できるようにし、それによって円形のバスタブやブローバスにも対応できるようになったこと」、これに加えて「伝統的なモザイクタイルのデザインや、大理石を使用した格調のあるデザインの中から、目的に合ったタイプを選択できるようにしたこと」だとか。

今までいろんな「スイートルーム」の導入例を見てきましたが、いずれも最初に感じた印象はとにかく広い、オープンで気持ちがいい!ということ。それよりもさらに広いお風呂というのは、どんなものなのでしょうか? さっそく拝見してみましょう。


驚異のゆとり、1.8坪+1.5坪

最初に見せていただいたリゾートスタイルは、花柄をモザイクタイルによって壁に再現した、これまでのシンプルな「スイートルーム」とはまったく趣きの違う商品です。(スイートルームの各タイプにはコーディネートNoという番号が付いていて、この花柄のタイプは「TS2」と呼ばれています。)

このコーディネートは社外のデザイナーの方々に描いてもらった50種類のデザインパターンの中から、選んで形にしたタイプのひとつとのことですが、やはりその人の個性というか、作風がしっかり反映されていてとてもユニーク。モザイクタイルという手法と、これまでにない装飾性を打ち出したかったとのことで、その意味では成功例といってもよさそうですが、なにぶん花柄ですからユーザーの中には自分の趣味ではないという声もあるかもしれません。

しかしながら1.8坪というバスルームの広さは、聞いただけではピンときませんでしたが、その場に立つとさすがに広い(従来品の約1.8倍ですから!)。そして1.5坪のパウダールームには2つのシンク。こちらも大人2人が余裕で使えそう。さらにバスタブが今までと違ってハート型のゆったりしたもので、これまた2人で使えそう。さらにさらに、バスタブだけでなく、バスタブを支えているエプロンの部分が広々としたベンチにもなっていて、そこにいろんなものを置いて時間をかけて入浴を楽しめるような“ゆとり”があります。半身浴をしながら、お茶を飲み、読書に興じる。そんなプライベートタイム…最高ですよね。

芸の細かさに舌を巻く

バスタブのエプロンをR状(円形)にしたり、段差をつくったり、パウダールームのシンクを置く台をあえてタイルで手作り感覚でつくったりして、単調になりがちなバスルームに長くいても飽きないような工夫がされているとのこと。花をかたどったモザイクの絵柄には、好みが出やすいという面はあるようですが、長くいても飽きないという意味ではこのデザインもなかなかのもの。
見ると、10種類以上の微妙な色合いの違うタイルを、ひとつひとつ貼り合わせていくという細かい作業の成果であることがわかり、その手作り感覚が味わい深い。さらにバスタブエプロンのR状の部分をタイルで実現していくという芸の細かさにも舌を巻きました。こんな手作り感覚を味わえるなんて、時代はどこまで進化するのかと思ってしまいますよねー。

もうひとつ、長いバスタイムを飽きさせない一工夫としては、床に使われているサーモタイルも特筆もの。冬の入浴時に素足になる度にヒヤリとして冷たさを感じているのは私だけではないと思いますが、この「スイートルーム」に採用されているタイルは柔らかくて、どことなく暖かい。これなら寒い地方でも、十分冷たさを軽減してくれるでしょうし、「防カビ・抗菌性にすぐれた材質」とのことですから、快適なバスタイムをさらに伸ばしてくれる効果もあるでしょう。


セレブな富裕層の心の琴線にふれる

リゾートスタイルは、ある意味、ひとつの到達点ともいうべき「究極のスイートルーム」なのでしょうか。

開発課のお話では、リゾートスタイルはフラッグシップという意味で開発したものですが、到達点とは考えておりませんとのこと。これまでに施工会社や設計事務所の人たちを招いてヒアリングを行った結果、デザインのインパクトが強すぎて、他の部屋や建物全体のデザインと合わせにくいとの指摘もあり、そうした声を分析して商品にフィードバックしていくのはこれからの課題とか。さらにグレードアップしたものを送り出していきたいとのことでした。あくなき挑戦は続くということですね。

本当はモザイクタイルですから、いろんなデザイン展開が考えられるわけで、今回の花柄がたまたま嗜好性が色濃く反映されたものだったということでしょうが、私自身は、ふだんシャープで無機的なデザインの建築物と多く接しているだけに、「時間をかけてバスタイムを愉しむセレブな富裕層の心の琴線にふれる」という意味では、逆に新鮮な印象を持ちました。

また、多様なデザインニーズに応えようとするINAXのメッセージは、十分伝わったのではないでしょうか。「ゆったりとお湯に浸かりながら壁を見るとき、そこには心がやすらぐようなものが欲しい」と考えるセレブなマダムは多いはず。薔薇は、そんな人たちの心をとらえて離さないようにも思います。


リビングや寝室とは異なった時間の楽しみ方を

さらに強く感じたのは、照明の使い方ひとつでクラシックな和風空間にもシンプルモダンの空間にも十分合わせられるのではないかということ。建物全体の統一感というのも大切ですが、バスタイムを“非日常”的なOFFの時間と考えると、そこにやや違った柔らかさを持つ空間があってもよいのではないかと…。

スイートルームが提案したかったのは、心の贅沢を満喫できるような“非日常”的な感覚のバスルーム。あえてこうした装飾性を強調したデザインを提案することで、リビングや寝室とはまた異なった時間の楽しみ方をしていただきたいとの思いが込められているようです。

モザイクタイルのデザインは、現在50種類用意されているということですが、今後はどんどんパターンも増えていくことでしょう。最終的には、オーダーメイドで建築家や建て主自身が描いたデザインを形にできるところまでいくかもしれません。そんな広がりを感じさせてくれるリゾートスタイルでした。

REPORTER PROFILE

坂本徹也
住宅建築ジャーナリスト、All About「建築家」ガイドとして、魅力ある住宅建築のレポートを執筆中。著書に『建築家と家をつくる愉しみ』『住宅プロデューサーを上手に使えば こんないい家がつくれる』などがある。

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